#03 One Stone -
出品作家:石井琢郎
会期:2019年4月6日(土) - 5月5日(日) / 14:00-18:00
オープニング:4月6日(土) 17:00-
美術に携わるようになって、呆然となったことが三度ある。一つは、素材をほとんど加工せず、形を作ることなく作品が成立していたという事実を知った時。二つめは、展示の予定が決まったがお金が全くなく材料が買えなかった時。三つめは、自身の経験を大きく超える、雄大な河と出会った時だ。
しかし、その呆然となった経験をきっかけに、自身の作品が変化していったと言っても過言ではない。ひとつめからは、彫刻における素材とは、そしてかたちとは何かという問いを立て思考することができている。ふたつめでは、素材自体を自然の中から拾ってくることで対処した。それが川の石だったのだが、その石から実に多くのことを考えさせてもらっている。また、川の石を使った先達の作品からも多くの示唆をいただいていると思う。
みっつめはこれからだ。山から水が流れてくるという現象に対して抱くイメージが、自分が想像している以上に、国や文化、環境の違いによって異なるのではないか、という問いがある。それを、言葉だけではなく肌感覚として考えていきたいと、想っている。(石井琢郎)
石井琢郎
2004年 東京藝術大学美術学部彫刻科卒業
2006年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻科修了
2009年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻彫刻研究領域修了
受賞
2009年 野村賞
2014年 Rokko meets art 公募準大賞
2018年 アイスタイル芸術スポーツ振興助成
コレクション
東京芸術大学大学美術館、THE GARDEN ORIENTAL OSAKA
主な展覧会
2019年 Memento Mori 昨日、今日、明日 / アズマテイプロジェクト / 横浜
2017年 個展 肌理のつらなり / 秋山画廊 / 東京
2016年 KAAT 突然ミュージアム2016 /神奈川芸術劇場 / 横浜
2015年 個展 Reach into it / さいたま市プラザノース / 埼玉
2014年 Rokko meets art 2014 / 兵庫
このプロジェクトは、石井琢郎と2人で軽トラを走らせ、コンパネを5枚担いで階段を駆け上がり、夜中まで丸鋸を廻し、埃と木屑にまみれ、刷毛を天井に撫で付けることで、実質的に始まったとも言える。出会って10年近くなるけれど、石井琢郎と密に過ごしたはじめての時間だった。一言で言えばとにかくタフな男だ。
誰もがニューロンに刺激を感じて、ある種のスイッチが入る瞬間がある。得意な分野であれば尚更、そこに神経を配りながら焦点を絞って没入する。しかし、石井は全方位に向かってほとんどの時間、スイッチを切り忘れているのではないかと疑うほどにエネルギーに満ち溢れている。
武者小路実篤の真理先生に登場する老年の画家は、ただ石ころをひたすら描き続けることで、真理に近づいていったのだろう。石井琢郎はプロジェクト第一弾のメメント・モリ -昨日、今日、明日-展で、河原に転がる無数の川石から選びぬき、投げつけ、削り取り、繋ぎ合わせた石彫を新作として発表した。武者小路の石描き先生やタフガイ石井が長年取り組む石彫を思い浮かべると、「石の上にも3年」では済まされそうもない道のりが見えてくる。(東亭順)

Room A / Photo by Hayato WAKABAYASHI

Room A / Photo by Hayato WAKABAYASHI

Room B / Photo by Hayato WAKABAYASHI

Room B / Photo by Hayato WAKABAYASHI

Room B / Photo by Hayato WAKABAYASHI

Room C / Photo by Hayato WAKABAYASHI